悪い男
とてつもない名作には、うまい感想が浮かばない。「うつせみ」に始まり、「受取人不明」、「サマリア」、「ブレス」など、キム・ギドク監督の作品を続けてきて観てきたけれど、「悪い男」は格別に良い。
主人公のセリフが極端に少ない映画を好むのはなぜだろう。北野武監督の初期の作品にもその傾向があるけれど、「悪い男」にはその必然性がストーリーのなかで感じられるから、なおさら良い。
これ、ほんとすごい。この映画の良さを表現するだけの語彙量が僕にもっとあればいいのにな。下手に書くと本質が逃げる気がして書けなくなってしまう。
こういう映画にめぐり合うのは数年に一度だと思う。
受取人不明
これもキム・ギドク監督の映画。米軍が駐屯する小さな村で暮らす3人の若者の悲しい青春を切々と描く。
ここまで絶望的な映画もそうそうないだろうというくらい、とにかく暗く、痛々しい。たっぷり2時間、映画の舞台の村に閉じ込められたような閉鎖感が息を詰まらせる。
うつせみ
留守宅に入り、住人が戻るまでに洗濯や食事をする行為を繰り返す謎の青年。ある日侵入した豪邸で、暴力夫に軟禁状態にされていた女性と遭遇してしまう。青年は女を連れ出し、今度はふたりで留守宅を転々とするようになる。
終始二人の会話はない。主人公の青年にいたっては、セリフはひとつもなかったように思う。この静かさは北野武の「あの夏、いちばん静かな海」にもちょっと似ている。
たぶん、最近観た映画の中ではもっとも良かった。こういう映画を作るキム・ギドク監督のセンスというのはどういうものだろう。まさに鬼才としかいいようがないな。
息もできない
家族のしがらみのなかで、社会の底辺をもがきながら生きるサンフンとヨニ。息もできないという題のとおり、本当に息もできない、いや息はしたけど、とにかく安直な救いは一切ない話。
主演のヤン・イクチュンは、製作、監督、脚本までこなした。チンピラ風情が妙に板についているのはなぜか。
最近見る韓国映画はあたりが多くてうれしい。
オールド・ボーイ
この映画はクライマックスだけ観た事があった。どこでいつ観たのか、さっぱり思い出せないのだが、姉弟のダムのシーンは痛烈な印象ではっきりと覚えていて、ラストに近づくにつれ、あれ?これいつか観た何かだと気づいた。
15年間の監禁生活を過ごした男の壮絶な復習劇。パク・チャヌク監督の復習三部作の二作目に当たる。
映画で流れるBGMがすばらしく、思わずサントラを購入。この曲々を聴くたびに、あのダムのシーンを思い出すのだろうな。過去の時間、特に思い入れ込んだ誰かの死は、残された本人にとっていつかの瞬間の記憶が鮮烈に頭にこびりつき、痛く苦しいことがある。その感覚は多少なりとも僕にもわかるから、ユ・ジテの役どころには、主人公よりよっぽど感情移入してしまう部分がある。
縞模様のパジャマの少年
軍人である父親の仕事の都合で、ベルリンから遠く離れた田舎に引っ越した少年。友達もいない環境で退屈していたが、ある日裏庭の小屋から外へ抜けると、なにやら「農場」のような施設あり、そこで「パジャマ姿」の少年と出会う。二人は次第に仲良くなり、フェンス越しにたびたび会話を交わすようになる。
ホロコーストを背景に描いた作品。中盤までは比較的ゆったりとしたストーリー展開だが、後半のあるシーンで、ざわっと嫌な予感が走り始める。そこからラストまでの展開はとてつもなく衝撃的で、鑑賞後しばらく放心してしまい、動けなかった。
わが教え子、ヒトラー
終戦末期のベルリン。ヒトラーは数百万の国民の前で演説を行う予定だが、ベルリンはすでに廃墟。威厳と体裁を保つため、急遽、張りぼての街並みを用意してのパレードが計画される。勝利に疑念を持ち始め、すっかりかつての自信を失ったヒトラーの演説の指導役となったのは、収容所から呼び戻された元映画俳優。皮肉なことに彼はユダヤ人であった。
もちろんストーリーはフィクションで、ましてやユダヤ人の演説指導など完全な作り話。ヒトラーやその取り巻きはひたすら哀れで滑稽に描かれる。だけど、ヒトラーの神経質な側面や、彼に演説指導をした教師がいたという史実、また父親や女性に対する劣等感などは部分的に実際の逸話に基づいていて、それらをうまくブラックユーモアとして取り入れているあたりが面白い。
THE WAVE
ある教師が1週間の実習のプログラムのテーマとして「独裁」を生徒に体験させようとする。自らを絶対的な支配者として崇拝させ、制服やチームのシンボルを与えることで、集団の結束を煽る。
教育の一環として、半ば思いつきで行われた「独裁」の実習は、教師の知らぬところで次第にエスカレートし、熱狂的な集団の狂気へ変わっていく。
かつて一度はドイツ国中を巻き込み、国家の公式なイデオロギーとして根付いたナチズム。この映画のように、人々は意外なほど簡単に心酔してしまったのだろう。
パレード
行定勲監督だからかな。TSUTAYAのランキングで1位とされていた。
ルームシェアをする5人の男女の話。特別良い部分も悪い部分もないから、なんとも感想を書きづらい。とりあえず、貫地谷しほりが演じる、琴ちゃんがかわいかったという記録まで。
スープ・オペラ
だいぶ昔、TBSで「私の運命」という連続ドラマがあった。坂井真紀が初主演でヒロイン役を演じたんだけど、ドラマの重苦しさもあって、あまりいい印象は持たなかった。でも今の坂井真紀は良い。目の下の涙袋が特にいい感じになった。
映画は、普通です。「トイレット」や「マザーウォーター」に近いものがあるけど、そこまで割り切って何も展開がない話に仕上げているわけではないので、ちょっと中途半端な感も。
スープ・オペラのタイトルどおり、作品の登場人物にとって、スープはとても重要な位置づけにあると思うんだけど、その肝心のスープがあまりおいしそうに見えない。鶏がらをコトコト煮込んだり、あたたかそうな湯気を昇らせたりといったシーンがあれば全然違うのに。残念です。
すべては海になる
女優として活躍する佐藤江梨子が好きだから観てみた。
これ、2年ほど前から気になっていた映画。ツタヤ店内の検索エリアで調べたら、俳優別コーナーにあると表示するので、向かってみたが、いくら探しても見つからない。そもそも佐藤江梨子の枠がない。じゃあ柳楽優弥かと思ったら柳楽優弥の枠もない。まさか特別出演的な吉高由里子で分類?と思ったけど、それも見つからない。
店員に尋ねたら、やっぱりコンピュータ的なもので調べて俳優別コーナーに探しにいって、見つからないと言って慌てて戻ってきて、何度もどこかに電話して、結局のところ「恋愛」コーナーにありましたというオチ。「そっちに、紛れてました」って。
いくら無類の在庫数を誇る渋谷ツタヤといえど、佐藤江梨子コーナーを設けるほど棚に余裕はない。柳楽優弥にしたって出演本数が少なすぎる。この作品が俳優別コーナーに置かれてた時期なんてあったんだろか。
映画はそこそこ悪くない。柳楽優弥はこの時期まだよく肥えていて見栄えしない。台詞回しも大根役者だけど、それでも極端には気にしないで観れる。
ラストのシーン、少しだけざわざわと嫌な予感が走る。些細なことだけど、それがなんとなく良かった。
乱暴と待機
本谷有希子原作。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」もそうだが、相変わらず題名の意味がわからない。本谷さんの、こういうセンスはあまり好きではない。でも、映画自体はおもしろかったです。
ナナセ役の美波って女優さん、けっこう好きな感じ。他人に気を使いすぎて、おどおどして、かえって人をイラつかせる女を演じさせたらぴかいち。「問題のない私たち」のときも、いじめられる中学生としてどこか似たようなキャラクターの役だった。
ミニシアター作品なのかな。あまり話題に上がらなかったような。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」が嫌いでなければ、たぶん観れます。
アウトレイジ
去年映画館で見に行ったけれど、DVDでレンタルできるようになったのでもう一度観てみた。
ギャング映画はもう撮らないと言っていた北野武の次回作がギャング映画だと知ったとき、友人と嗚咽をあげるほど喜んだ。それほど待ちわびた映画だっただけに、劇場で観たときはずいぶん落胆したのを覚えてる。
これまでの北野映画にあるような暴力的ながらもどこか詩的な悲しさが、この映画には感じられない。ソナチネやHANA-BIのようなものを期待して観るとがっかりする。
でも二度目の観賞では、純粋に娯楽映画として楽しめた。切り落とした指がラーメンにぽちゃんと入るあたり、やっぱり武の映画だなと思う。
震災で延期になったけれど、来年の今頃はアウトレイジ2が上映かな。1作目を観ている分、当然過去の作品と比較しないですんなり受け入れられるんじゃないかな。楽しみです。
パーマネント野ばら
菅野美穂のひさしぶりの主演映画。
タイトルやジャケットの雰囲気から、なんだかほのぼのした映画なのかな、なんて決め付けていると騙される。特にラストは意外な展開が待っていて、思わずはっとさせられる(途中このラストのヒントになるようなシーンはいくつかあったんだけど)。
監督さん、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」と同じ方なんですね。
川の底からこんにちは
満島ひかりを、はじめて女優としてわるくないかもと思った映画。この人、昔Foleder5メンバーのひとりだったんですね。BelieveのPV観るとたしかにいる。
映画は爽快です。ヒロインの開き直りっぷりが心地よい。
ちゃんと伝える
園子温監督の作品。
EXILEのAKIRAの演技が、役に合ってないというか、不自然でダメな感じ。妙に「いい人」すぎる。
逆に伊藤歩は良かった。主人公からとても大切な告白をされ、それをなんとか受け止めようと涙するシーンが特に良い。
伊藤歩の魅力だけで最後までなんとか観れましたという感じ。
犬猫
榎本加奈子と藤田陽子のダブル主演。二人の会話の空気感とかが重要な映画だと思うんだけど、それがうまくいっている。
藤田陽子はこれが映画初主演らしい。いい女優さんだな。半テンポ遅れて声を出すようなしゃべり方は普段からそうなのだろうか。この映画の役柄にはぴったり合っていたと思う。
ケンタとジュンとカヨちゃんの国
息の詰まるような生活に耐えかね、新たな一歩を踏み出そうと、旅に出る孤児院出身のケンタとジュン。ただ誰かに愛されたいと願う不細工のカヨちゃんも、ジュンを追うように着いてくる。
エンディングテーマの阿部芙蓉美の歌う「私たちの望むものは」が強烈。ほとんど救いのないラストとあいまって、ずしーんとくる。
ノルウェイの森
ずっと避けてた映画版「ノルウェイの森」を観た。原作が良し悪しは別として、すごく衝撃的だったから、インパクトの面で映画はがっかりするんではないかと観ないでいたけれど、あ、別に悪くないじゃん、と思った。
小説では、緑が一番好きだったんだけど、映画でも緑はやっぱり一番好きだった。水原希子、イメージにぴったりだったし、ちょっとたどたどしい感じの台詞の言い回しもかえって良かった。演じることに慣れた女優さんではできないと思う。原作の台詞だってかなりうそ臭いんだから、映画でもちょっとうそ臭いくらいがちょうどいい。
ねえワタナベくん、 わたしがいま、なにをしたいか、わかる?
いつも挑発的なことを言う緑は、たぶん「ノルウェイの森」に出る人物のなかで一番空気を読んでしまう子で、普通の子だと思う。
神楽坂恵
「午後の遺言状」上映前に園子温監督の「恋の罪」の予告編が流れていた。
また神楽坂恵を妻役で使ってるんだな。「冷たい熱帯魚」を観てからお気に入りの女優さんです。同じ監督にまた使われるというのは、女優としてキャリアの浅い彼女にとって、これから大きな自信につながっていくのだろうなと思う。
その反面、今の神楽坂恵の魅力って、女優として成熟してないからこその、不安定さ、危うさみたいなのが、園子温監督の作風、抜擢された役柄に超絶にぴったりだからなのではないかと思う部分もあって。
今後ももっと活躍してほしいけど、そのときに今のような魅力をそのまま保てるかが心配になります。
午後の遺言状
新藤兼人監督の「一枚のハガキ」の公開が近いからか、テアトル新宿で同監督の過去の作品のリバイバルが行われていた。たまたま通りかかって、時間がちょうどよかったので、「午後の遺言状」を鑑賞。
この映画を観るのは二度目なんだけど、本当に良い。すばらしい。ひとつの人間関係のひとコマを通して、生きるということ、老いるということ、死ぬということを、これだけシニカルに、コミカルに、ときにシリアスに描いた作品というのはあまりない。
これぞ日本映画の真髄だな、としみじみ思う。
異人たちとの夏
40歳の脚本家が昔死んだはずの両親に再会する。一方で同じマンションに住む妙齢の女性とも不思議な出会いが訪れる。1988年の映画で原作は山田太一の小説。
江戸弁が子気味良い片岡鶴太郎、妙に色っぽい秋吉久美子がとても印象的。片岡鶴太郎が俳優業を本格的にやるようになったのは、この映画の演技が評判だったのがきっかけだと思う。
ぽかーんと観てたのに、かえって涙腺が油断したか、後半ちょっと泣いてしまいました。
ぼくのエリ
生き血を吸って生きる少女と、孤独な少年のおそろしくも儚い恋の話。邦題の「200歳の少女」というサブタイトルはいらないと思う。
ところどころ、特に最後はかなり超展開なんだけど、押し付けて納得させようとせず、あっさり自然にやってのけるので、ただ圧倒されてイラつかない。
北欧の映画って、あんまり知らないけど、こういうのだったらほかにもっと観てみたいと思う。
春との旅
家を捨て、兄弟のだれかにお世話になろうとする老人と、その孫娘、春との旅。
偏屈で、わがままなくせに、弱虫で情けない。老人役の仲代達矢の演技が真実味があってすばらしい。そんな祖父を見捨てられない孫役の徳永えりも、自然体で良かった。
こういうごまかしのきかない映画で、力のある若い女優さんが、ベテランの俳優陣に囲まれつつ真正面から役にぶつかっていくのは、とても良いことだと思う。
やっぱり邦画はこうでなくっちゃね。
八日目の蟬
新宿ピカデリーで観てきました。
パンフレットや公式サイトで使われている赤バックのビジュアルのせいで、「深紅」のようなもっと暗くどろどろとした映画を想像していたけれど全然そういうのじゃなかった。
永作博美の名演がとにかく心にしみる。二人の幸せな時間がもっと続いて欲しくて、でもいつか終わってしまうのはわかっていて、それがなんだかとても悲しくて、めずらしく途中泣きました。
問題のない私たち
2004年公開の映画。黒川芽以主演。転校生役の沢尻エリカにずいぶんあどけなさが残っている。
少女漫画が原作。映画は二部構成になっており、一部は生徒同士のいじめ、二部は教師の万引きがテーマとなっている。原作はこれに続いて新入生のリストカットの三部があるが、映画は二部までで終わり。暗いテーマだけど、一部、二部ともに救いがあり、ラストは後味がよく仕上がっている。ブレイク前の女優が主演、準主演を務めたひそかな名作。
ただ個人的には、黒川芽以でも、沢尻エリカでもなく、いじめグループのひとりに加わっているショートボブの女の子のルックスとバカっぽい演技がお気に入り。クラスに一人くらいいたよね、色気づいてブラウスのボタン胸元まではずして、リーダー格ではないけど、その周辺うろちょろしてて、それでまあそこそこ可愛い子。その感じがうまく出てました。
目黒シネマ
暇ができたので「マザーウォーター」と「オカンの嫁入り」を観に行く。
早く着きすぎて館内で上映を待っていたら、中学、大学とよくつるんでいた旧友にばったり遭遇。偶然会うにしても場所が意外すぎた。まさかこんな薄暗い名画座で再会とはね。
お互いに「なんでお前こんなとこいるわけ?」「まさか男と一緒に映画観るとは思わなかったよ」なんて言いながらも、野郎二人にてんで似合わぬ映画をたっぷり2本鑑賞。その後、酒を交わして解散。
こんなことってあるんですね。
肝心の映画のほうは、「マザーウォーター」はあらためて語ることなどない、いつも通りの何も起こらない映画。「オカンの嫁入り」はお約束通りのお涙頂戴な展開。
あと、鑑賞中にちょっと地震で揺れました。
海炭市叙景
佐藤泰志の短編小説をもとにした映画。舞台は、北海道の函館市がモデルらしい。
敗退する地方都市で、もがきながら生きる人々の日常のひとコマをそのまま切り取ったような短編集。部分的にそれぞれの主人公がゆるく交差するシーンがある。やっぱり邦画ってこうでなくっちゃって思わせるような、淡々としていて、良い意味で抑揚のない映画。しみじみと観れます。
ケイズシネマという新宿のミニシアターで鑑賞したんだけど、とても清潔な映画館で、シートの座り心地も良い。ひとりで観に来ている人が多かったです。
悪人
これまた目黒シネマで。
つい感情が高ぶって女を殺してしまった男と、その男に惚れこんでしまった女。その二人が話の中心ではあるのだけど、ほかの登場人物の描写の掘り下げ方と、役者の演技の半端なさとで、かなり味わい深い作品に。
本当の「悪人」って何だろう。ストーリーは暗く重たいが、その分、後からじわじわ考えさせられる映画に仕上がっておりました。
っていってもちょっと物足りなさも残る映画だったんだけど。
告白
目黒シネマで鑑賞。
娘を生徒に殺された女教師の、ひとつの「告白」から幕を開けるこの映画。彼女は少年法で守られた生徒達に、ある方法で罰を与える。それは単なる復讐なのか、彼女なりの生徒への愛情なのか。
冒頭からぐいぐい引き込むかと思いきや、それが最後まで続かない。主要な人物の行動の背景が、どれも動機としては弱いためだと思う。みんなそれぞれ狂った行動をとっているのに、あまり凄みを感じないのは、対比となる「正常」な人物がいないためか。
原作の小説はどうなんでしょうね。
冷たい熱帯魚
ひさしぶりに映画館で邦画を観た。
小さな熱帯魚屋を営む、気弱で地味な主人公が、とんでもなく、猟奇的な連続殺人事件に巻き込まれていくお話。これ、埼玉愛犬家連続殺人事件という実際に起こった事件を題材にした映画らしい。
黒沢あすか、神楽坂恵のちょっと田舎っぽさのあるエロさと、なにより、でんでんの思わず震えあがるほどの怖ろしさがあとひく映画。観ている最中、妙な汗をかく場面が何度かありました。
死体をバラす現場の妙に宗教じみた雰囲気や、ラストシーンで警察のとった行動の不可解さ、それまで冷酷だった村田の妻、愛子の一変したデレっぷりなど、よくよく考えれば腑に落ちなさそうなところはいくつかある。けれど、そんな矛盾は、観終わった直後の強烈な余韻で吹き飛ばしてくれる。
数少ない、もう一度みたい映画のひとつです。
チェンジリング
実際にアメリカで起こった事件を映画にした「チェンジリング」。邦画以外でひさしぶりに心がふるえるほどの傑作に巡り合えました。
当初ミステリーを想像していた僕は度肝を抜かれることに。悲劇だけど、過度に恐怖感を煽りたてたりせず、あくまで母親の強さを主体にした脚本と、それを見事に映画化したクリント・イーストウッド監督はすばらしい。
ドラマチックな演出で涙を頂戴する映画は数あれど、観終わった後、その余韻で自然に涙を流せる映画というのは、そうそうないものです。
"シーズン"ばかりが延々続くへっぽこ海外ドラマに毒される前に、これを観ることをオススメしておきます。
すべては海になる
佐藤江梨子と柳楽優弥のダブル主演。このふたりの組み合わせは嫌みがなくていい。
佐藤江梨子が好きと言うと、「いやー、ニガテーだわ…」と返されることが多いのだけど、きっとバラエティにも出てた頃の印象が残っているのだと思う。少なくとも女優として面白いとおもうんだけどな。
マイムマイム
シネフィル・イマジカで深夜放送していて何気なく観た邦画「マイムマイム」。すっごい良かった。特に公式サイトとかないようだけど、ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリをとった自主映画だということはわかりました。
低予算でアマチュアの俳優使ってここまで良い映画撮ってる人がいる一方、大金使って有名な俳優使って「北京原人」とか「デビルマン」とか、そういう歴史的な失敗作を世に送り出す人もいる。
若くてセンスがある岨手由貴子さんのような監督が、将来商業ベースの映画を作ったときに、そんなふうになってしまいませんように。
トウキョウソナタ
なんとなく借りてみたんだけど、期待をはるかに上回る神映画でした
表面上は平和な家庭。でも家族のそれぞれが秘密を持っていて根っこの部分では不協和音が流れている。その綻びは次第に拡がりはじめ、家族崩壊の危機に。このストーリー展開は「空中庭園」のそれとそっくり。どちらも小泉今日子が母親役というところまで一致しています。両映画とも違った良さがありますが、「空中庭園」の刺々しさが苦手だった方も「トウキョウソナタ」なら観れるはず。
それにしても、本当に良い映画です。ここ最近観たなかではダントツでした。やっぱり邦画はこうでなくっちゃダメだよ。
プリート・パルン作品集
ラピュタ阿佐ヶ谷に行ってきました。僕はここの近所に住んでいるくせに今まで一度も行ったことなかったんです。というか、前を通ったことすらなかった。
記念すべき初ラピュタで観たのはエストニアのアニメーション作家、プリート・パルンの作品集。
正直ストーリーとか不条理すぎてよくわからないものが多かったのだけど、慌てんぼうのタヌキが主人公の作品は結構良かった。騙し絵をアニメーションにしたような作品で、想像を覆す展開がテンポよく続く。いちいちストーリーを追わなくても楽しめます。
今はエストニアのアニメーション作品のほか、ユーリー・ノルシュテインの作品集も上映しているので、そのあたりに興味のある方は足を運んでみては。
ぐるりのこと。
リリー・フランキーと木村多江が扮する夫婦の物語。夫のほうは法廷画家の仕事をしているので、裁判のシーンがたびたび出てくるのですが、それがかなりリアルで痛々しい。そのシリアスさと、夫婦再生のシーンとのギャップが良い効果を出していました。
木村多江は幸の薄い役がよく似合います。白い巨塔のときも思ったけれど、この女優さん、泣く演技が超うまいんですよね。
最近観る邦画はあたりが多くてうれしい。
100万円と苦虫女
観た。すごく良かった。
僕が蒼井優大好きだということで、ひいき目に観ている部分はあるのだが、それを差し引いても面白い映画だと思う。森山未來やピエールの演技も素朴で良かったな。
ちなみに、知る人ぞ知る名俳優、山本剛史もちょびっとだけ出てます。予想外だったので気づいたときは嬉しかった(僕はこの俳優さんの大ファンなのだ)。
レンタルできるのでまだ観てないという方におすすめしておきます。
こういう邦画がたくさん増えるといいな。
ディファイアンス
こういう映画ってすごくひさしぶりの登場なんじゃないかな。戦争に関連した映画の公開がめっきり減ってしまっている印象がありました。
オフィシャルサイトでは、映画の予告編だけでなくて、当時の実際の映像を、ストーリーの時系列に応じて観られるようにしてあるようです。
アキレスと亀
20日公開だった「アキレスと亀」。さっそく観てきました。
まあまあ良かったです。これまでの北野武のギャング映画とも、「監督・ばんざい!」などのオバカ映画とも違う、新しい雰囲気の映画でした。
後半になるとビートたけしが出てくるのですが、彼はもう、普通にしゃべっているだけでなんか面白いです。それから、麻生久美子が年をとって樋口加南子になるのですが、ふたりの顔はとても似ていて違和感がありませんでした。
パラダイス・ナウ
イスラエル占領下での生活に苦しむパレスチナの二人の若者が、自爆攻撃へと向かう過程での心の葛藤を描いた映画。
この映画に真実味が感じられるのは、パレスチナあるいはイスラエルの、どちらか一方の側に偏らず、かといって第三者的な立場を気取る事もなく、今起こっている現実のひとこまを、ありのままに切り取って映像化しているように思えるからでしょう。
前半の、二人が丘に座りのんびり水たばこを吹かすシーンが、ラストの重々しさとのギャップと相まって、とても印象に残っています。
トニー滝谷
原作は村上春樹の短編。ほとんど小説を読んでいるかのような、たんたんとした展開の映画。どうしようもなく暗いストーリーなんだけど、それが良い。あと、宮沢りえの線の細さが良い。
「レキシントンの幽霊」にはこれ以外にも地味ながら味わい深い短編が収められています。「七番目の男」や「沈黙」もうまく映画化できたら、とても面白いんじゃないか。
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」を観て大感動。これは大変な傑作でした。佐藤江梨子がすごく輝いてみえます。
原作は本谷有希子の小説。他にもいくつかトゲのありそうな話を書いているので注目しています。しかも美人さんなんですねー、この人。
TAKESHIS'が楽しみで仕方がない
Office Kitano待望の新作「TAKESHIS'」が、いよいよ来月公開されますので、今から大変ワクワクしております。
今までビートたけしが出演している映画、あるいは北野武が監督の映画は、ほぼすべて見てきたというくらいに、俳優としても、監督としても、僕は大ファンなわけです(芸人としてはまあまあな案配にファン)。ジャンルを無視して考えると、ビートたけしの僕のなかでのファン度ランクは、圧倒的に1位です。そして、2位には及川奈央がランクイン。
さてさて、それでもちまして、コミュニティではすでに試写会で見てきた方の感想っぽいものが書き込まれているのですが、どうやら賛否両論あるだろうな、とか、はたまた最高傑作だ!とか、そんな感じのもののようでした。うん、賛否両論あるのは、どの映画もそうだとは思いますが、僕はもう映画の中のビートたけしが拝めれば、内容はどうであれ、大方満足してしまうはずです。
例えば、Dollsもそうですが、公開されてからの評判は芳しくなかったのですが、僕の短い人生の中では、確実に邦画ベスト5にランクインしています。(おや? Dollsには、ビートたけし出てなかったような。まあいいや)
だから、内容とかはある意味どうでも良いのです。北野武監督曰く、「主張のある映画はあんまり好きじゃない」とかなんとか言っていた通り、彼の映画の中で、明確に「言いたいコト」みたいなものはないわけでして、僕も別に何も感じ取ってません。要は雰囲気が重要だということです。はあ、楽しみ!
公開初日に見てきた。まずまず、よかった。
嗤う伊右衛門
映画『嗤う伊右衛門』を見ました。
原作は2年くらい前か、もっと前か忘れましたが、すでに読了しており、映画化されたことは知っていたけれど、原作を知っている映画を観て幸せな思いをしたケースに覚えがないといいますか、大抵の場合無念なことになるケースばかりですので敢えて鑑賞を控えていたのです。
それがなぜ観てみることにしたのかというと、レンタル店で何気なくパッケージを眺めたときに、そのキャスト陣に松尾玲央の名前があるのを発見したからです。彼女は『ほとけ』や『フィラメント』で「強い男に付いてまわる頭の悪そうな女の子」といった役どころに、グッとくる演技を醸しており、なかなか好印象だったのを覚えておりました。また、松尾玲央に改名する以前は「不二子」という名前で活躍しており、そのかなりイカした響きも良い案配だと、これまたグッときていたわけです。
肝心の伊右衛門役の唐沢寿明と岩役の小雪は、僕の好みとは外れた俳優ではあったのですが、まあ観てみないことにはそれもわからないし、とりあえずなんか不二子だし、ってことで借りてみることにしたのでした。
それでまあ結果としましては、はっきりこれは失敗でした。
前半のあたりはスパゲティ状に絡んだ人間関係を、ほとんど詳説せずに進んでしまい、原作を読んでいたから足りない描写をなんとなく補完できたものの、それでも途中でわけがわからなくなってきてしまいました。映画で初めて本作に触れた方は相当な理解力を要するのではないかと思うのです。
後半に入ってもそのあたりのもやもやはすっきりすることなくストーリーは進み、堂々巡りの哀しい因果関係を、映画からでは汲み取ることができないままエンドロールを迎えることになります。
それにしても原作とは外れたラストシーンの演出は何を意味していたのか、変えるなら変えるなりに上手いことその意図が伝わるようになっていたら、それはそれで良いと思うのですが、あれじゃあ無念です。
少なくとも原作に感銘を受け、じゃあ映画を観てみようという人にはちょっと向かない作品になってしまったのではないかと思います。
で肝心の不二子というか、松尾玲央ですが、それなりに重要な役どころを上手に演じてはいたとは思うのですが、なんか暗くて良く顔も見えないし、映画自体がつまらなければそっち系(どっち)な楽しみ方もあるなと思っていたのですが、それも結局、許されませんでした。
やはり「原作を既読していると映画が無念に思えてしまう」という定説は破れなかったといいますか、端からこうなるとは思っていたからこれまで観てこなかったわけですから、残念にも予想通りではあったといえましょう。
もし映画だけを観て『嗤う伊右衛門』はつまらないよ、と感じた方がいらっしゃいましたら、ぜひ同名の原作を読んでみてください。すばらしいです。よろしくおねがいします。
ところで今度は『姑獲鳥の夏』が映画化されるみたいですね。
たぶんまたしばらくは観賞しないことにすると思うのですが、原作は高校のときに初めて読んだ記念すべき京極堂一冊目。あのある意味無茶苦茶なオチは、京極夏彦の分厚い価値観にはまり込んでこそすんなり受け入れられるものだと思うのです。原作では、前半部分にそれを説得力のある言葉で巧みに頭に叩き込んできますが、映画の限られた時間で果たしてどこまであの世界観を表現しきれるものか、見ものといえば見ものです。