受取人不明
これもキム・ギドク監督の映画。米軍が駐屯する小さな村で暮らす3人の若者の悲しい青春を切々と描く。
ここまで絶望的な映画もそうそうないだろうというくらい、とにかく暗く、痛々しい。たっぷり2時間、映画の舞台の村に閉じ込められたような閉鎖感が息を詰まらせる。
うつせみ
留守宅に入り、住人が戻るまでに洗濯や食事をする行為を繰り返す謎の青年。ある日侵入した豪邸で、暴力夫に軟禁状態にされていた女性と遭遇してしまう。青年は女を連れ出し、今度はふたりで留守宅を転々とするようになる。
終始二人の会話はない。主人公の青年にいたっては、セリフはひとつもなかったように思う。この静かさは北野武の「あの夏、いちばん静かな海」にもちょっと似ている。
たぶん、最近観た映画の中ではもっとも良かった。こういう映画を作るキム・ギドク監督のセンスというのはどういうものだろう。まさに鬼才としかいいようがないな。
息もできない
家族のしがらみのなかで、社会の底辺をもがきながら生きるサンフンとヨニ。息もできないという題のとおり、本当に息もできない、いや息はしたけど、とにかく安直な救いは一切ない話。
主演のヤン・イクチュンは、製作、監督、脚本までこなした。チンピラ風情が妙に板についているのはなぜか。
最近見る韓国映画はあたりが多くてうれしい。
オールド・ボーイ
この映画はクライマックスだけ観た事があった。どこでいつ観たのか、さっぱり思い出せないのだが、姉弟のダムのシーンは痛烈な印象ではっきりと覚えていて、ラストに近づくにつれ、あれ?これいつか観た何かだと気づいた。
15年間の監禁生活を過ごした男の壮絶な復習劇。パク・チャヌク監督の復習三部作の二作目に当たる。
映画で流れるBGMがすばらしく、思わずサントラを購入。この曲々を聴くたびに、あのダムのシーンを思い出すのだろうな。過去の時間、特に思い入れ込んだ誰かの死は、残された本人にとっていつかの瞬間の記憶が鮮烈に頭にこびりつき、痛く苦しいことがある。その感覚は多少なりとも僕にもわかるから、ユ・ジテの役どころには、主人公よりよっぽど感情移入してしまう部分がある。
縞模様のパジャマの少年
軍人である父親の仕事の都合で、ベルリンから遠く離れた田舎に引っ越した少年。友達もいない環境で退屈していたが、ある日裏庭の小屋から外へ抜けると、なにやら「農場」のような施設あり、そこで「パジャマ姿」の少年と出会う。二人は次第に仲良くなり、フェンス越しにたびたび会話を交わすようになる。
ホロコーストを背景に描いた作品。中盤までは比較的ゆったりとしたストーリー展開だが、後半のあるシーンで、ざわっと嫌な予感が走り始める。そこからラストまでの展開はとてつもなく衝撃的で、鑑賞後しばらく放心してしまい、動けなかった。
わが教え子、ヒトラー
終戦末期のベルリン。ヒトラーは数百万の国民の前で演説を行う予定だが、ベルリンはすでに廃墟。威厳と体裁を保つため、急遽、張りぼての街並みを用意してのパレードが計画される。勝利に疑念を持ち始め、すっかりかつての自信を失ったヒトラーの演説の指導役となったのは、収容所から呼び戻された元映画俳優。皮肉なことに彼はユダヤ人であった。
もちろんストーリーはフィクションで、ましてやユダヤ人の演説指導など完全な作り話。ヒトラーやその取り巻きはひたすら哀れで滑稽に描かれる。だけど、ヒトラーの神経質な側面や、彼に演説指導をした教師がいたという史実、また父親や女性に対する劣等感などは部分的に実際の逸話に基づいていて、それらをうまくブラックユーモアとして取り入れているあたりが面白い。
THE WAVE
ある教師が1週間の実習のプログラムのテーマとして「独裁」を生徒に体験させようとする。自らを絶対的な支配者として崇拝させ、制服やチームのシンボルを与えることで、集団の結束を煽る。
教育の一環として、半ば思いつきで行われた「独裁」の実習は、教師の知らぬところで次第にエスカレートし、熱狂的な集団の狂気へ変わっていく。
かつて一度はドイツ国中を巻き込み、国家の公式なイデオロギーとして根付いたナチズム。この映画のように、人々は意外なほど簡単に心酔してしまったのだろう。
