May 14, 2006
サッカーという文化の揺らぎ
ユベントスの疑惑がいよいよ表沙汰になり、関係者への捜査が進んでいる。
・不正疑惑でユーベ降格か イタリア紙が伝える
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/headlines/20060514-00000079-kyodo_sp-spo.html
今回の捜査の中心はユベントスの幹部2名という事だが、ルチアーノ・モッジGMがその1人。
自分のチームが有利になるように審判を指名したという疑惑だが、疑惑の本筋はもっと別なところにあるかもしれない。
八百長というには少し複雑すぎる事情があるようなので、この辺は後日書く事にしたい。
チームは14日の試合でレッジーナに競り勝ち2連覇を達成したが、思わぬところで(予想はできたが)重大な横槍が入る事になった。
選手とサポーターは本当に不憫というしかないが、これもサッカーというスポーツの色々な側面の一つでもある。
サッカーはスポーツだが、ビジネスであり、学生レベルを超えるとアマチュアという概念は存在しない。
規模の大小はあるものの世界各国にプロリーグは存在し、「お金」が動いている。
ワールドカップでさえ審判を含め運営者にはお金が入る。
日本やアメリカでは野球が人気だが、世界的に見るとサッカーが一番人気なのは疑いの余地がない。
ヨーロッパでは1チームの1シーズンの試合放映権が20億や40億という巨額な値段で取引され、購入事業者はそれを世界各国の放送事業者に売っている。
ワールドカップともなるとアジア圏の放映権で100億を超える金額になり、スポーツだからと無視できる金額ではない。
サッカーチームの資金源というとまっさきに試合の観客収入が思い当たるが、ビッククラブになればなるほどこの収入源の割合は低くなる。
放映権がかなりのウエイトを占める場合が多いが、他にもグッズや選手の売却、スポンサーとの契約等多岐に渡る収入源があり、これをうまく運営する事がビッククラブの条件であるとも言える。
こんなお金まみれの状況でもサッカーが人気スポーツであるという事実が揺らがないのは、最終的にはチームが勝ち、リーグ戦で優勝し、世界一のクラブになるという事実が人気を上げ、チームの収入を助けるというシンプルな構造になっているからである。
お金で選手を買い、高い監督を雇ってもチームが勝てなければ人気は下がり、収入は減ってチームはさらに弱くなる悪循環になっていく。
人気選手の獲得は収入を上げる為には一番手っ取り早い手段だが、チームとして機能せず勝てなければ逆効果になる可能性もあるわけだ。
面白いのは今回の疑惑の中心であるユベントスの現状だ。
今年のユベントスは後半失速したものの今年のセリエAを圧倒的とも言える成績で優勝した。
しかしユベントスのホームスタジアムであるスタジオ・デッレ・アルピは満員になる事はほとんどない。
チャンピオンズリーグの準々決勝のアーセナル戦といういかにも観客が集まりそうな試合でも空席が目立つ状態で、ユベントスというチームの状態を如実に表している。
上に勝てば良いという風に書いたが、それだけではないという格好の材料だろう。
チームが弱い状態でも熱心なサポーターを持つクラブは強い。
たとえばバルセロナは最近ではリーガ2連覇を達成し、17日に行なわれるチャンピオンズリーグでも決勝まで進んでいるが、3-4年前は本当にひどい状態だった。
優勝はデポルティーボやバレンシア、レアルにさらわれ、10位台の順位に下がる事もあった。
しかしそんな状態でも観客席はいつも満員で、クラブの正会員になる為には3年以上の待ちが必要になるような状態だった。
しかも未だにユニフォームの胸にはスポンサーのロゴがなく、メインスポンサーはいない。
これも熱心なサポーターのおかげといえるだろう。
バルセロナとユベントスは歴史と伝統という意味では一見違いがない。
設立はユベントス1897年、バルセロナ1899年とほぼ差がなく、両チームの世界での活躍も大差ない。
それでもこのような差がでるのはやはりクラブの経営方針に原因があるだろう。
バルセロナはあくまでもサポーターのチームという方針を貫いており、クラブの関係者は幹部を中心に未だに無報酬で働いている。
対してユベントスはモッジGMの方針はあくまで経済的な物を第一に考える傾向にあり、それはサポーターを離れさせる要因になっている。
選手の移籍に関してもユベントスは強引な手段を取る場合が多く、他のチームから顰蹙を買う事も少なくない。
それは実際のサッカーにも現れ、イタリアとスペインという違いはあるがバルサの攻撃的でスペクタクルなサッカーは誰が見ても面白い物であり、ユベントスの硬く安定感のあるサッカーはお世辞にもスペクタクルとは言えない。
今回の事件で不正が事実と確認されれば、ユベントスは熱心なサポーターさえ大量に失う事になるだろう。
セリエB降格という話も出ているが、B降格が些細な事だと思うほどこの影響は大きい。
最終的にはフェアなグラウンド内での勝負であるからサッカーは面白い。
選手の移籍に多額の資金を投入しようが、スポンサーと100億以上の契約を結ぼうが、最終的にはグラウンドでの選手と選手の戦いになるのがサッカーの面白さであり、文化であるはずだ。
審判の買収や八百長等グラウンドに直接影響のある事は厳しく取り締まり、グラウンド内にはお金のにおいを持ち込まないようにしてもらいたいものである。
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